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鶴巻温泉病院 〒257-0001 神奈川県秦野市鶴巻北1-16-1 TEL 0463(78)1311

日本をリハビリテーションする

脳卒中(脳梗塞、脳出血)やその治療、リハビリテーションについて分かりやすく説明します。

第5回 脳ドックで脳動脈瘤が見つかったらどうする 手術か経過観察かどちらが正しい?

 前回に引き続き「脳ドックの功罪」について お話ししたいと思います。


脳動脈瘤が見つかったら

たとえ未破裂脳動脈瘤が見つかっても
不安をつのらせてはいけない
depositphotos.com

 皆さんが「脳ドック」を受けて、「未破裂脳動脈瘤が見つかった」と言われたら、どうしますか?開頭手術を受けるかどうか、血管内治療を受けるか、このまま様子を見るか、すぐに決められますか?


 人間ドックで「『がん』がありそうだ」と診断されたら、ほとんどの人は迷わず、治療を受けると思います。がんは、ほっておくと死に繋がる疾患だからです。


 しかし未破裂脳動脈瘤は、必ずしも死に繋がりません。ほとんどの動脈瘤が10mm以下ですが、その場合、破裂する確率は、場所や大きさによって異なるものの、年間0.14~3.19%です。


自分の意思で決定

 50才の人が脳ドックを受けて脳動脈瘤が発見され、「年間の破裂率が1%だ」と言われたとします。80歳までに30%の破裂率です。70歳まで元気でいられれば良いと思っている人だったら、そのまま様子を見ようと思うかもしれません。近親者がくも膜下出血で亡くなったりした方は、すぐに治療してほしいと思うかもしれません。



 しかし治療にはそれなりのリスクがあり、本来元気だった人が、治療によって手足が麻痺したりする可能性が1.9~12%あります。ガイドラインにありますが、「施設や術者の治療成績を勘案して」と言っても、どの施設が良い施設か、一般の人には分かりません。ドックの先生が紹介してくれるのでしょうか?


 そのように考えると、一般の人が判断するのは大変難しいものがあります。また「確率が〇○%だ」とか言われても、破裂するかしないかで考えると五分五分で、何年生きるかも分からないのに、混乱が深まるばかりです。つい「先生にお任せします」と言いたくなりますが、最近では「こういうことはご自分で判断していただくことが必要です」とか言って、答えてくれません。


脳ドックで未破裂脳動脈瘤が見つかっても不安をつのらせてはいけない

 さて困りました。考えている間にも動脈瘤が破裂するかもしれません。不安で眠れないかもしれません。誰に相談していいかも迷います。ドックで診てもらった先生は、有名な別の脳外科の先生を紹介してくれるだろうかと思います。


 脳ドックを受けたために、知らなかった脳動脈瘤があることがわかり、今まで気にせずに生活してきたのに、何をするにも心配になり、人生が真っ暗になってしまったという話もあります。


 脳ドックガイドライン2014でも以下のような記載があります。


 「MRIなどで発見された無症候性脳病変を、脳ドック受診者に説明する場合には十分な注意が必要である。説明する側は、たいしたことはないと思っていても、説明を受ける側は想像以上に深刻に受け止める場合があり、今後の生活によけいなストレスを与えてしまう場合がある。(中略)いたずらに不安感をつのらせるだけにならないように注意する」


 「未破裂脳動脈瘤診断により患者がうつ症状・不安を来たすことがあるため、インフォームドコンセントに際してはこの点への配慮が重要である。うつ症状や不安が強度の場合はカウンセリングを推奨する。患者および医師のリスクコミュニケーションがうまく構築できない場合、他医師または他施設によるセカンドオピニオンが推奨される。未破裂脳動脈瘤の自然経過や治療適応、治療法の選択については未だ確定できないものも多く、患者は医師から伝えられた情報を正確に理解することが容易ではない。破裂リスク、治療のリスクは患者には非常に高く捉えられる傾向があり、未破裂脳動脈瘤が診断されることにより不安が高まるという報告がある」

未破裂脳動脈瘤が見つかったときの対応を決めてから脳ドッグを受けること

 このように脳ドックを受けて、未破裂脳動脈以外でも、無症候性脳血管病変が発見されたり、認知症の可能性が指摘されたりすることで、その人のQOLが低下してしまうことがあります。


 私は「脳ドックを受ける場合は、脳ドックでわかることをよく勉強して、もし何かわかったらどうしようと、ある程度、決めてからドックを受けましょう」と伝えています。


 例えば、未破裂脳動脈瘤が見つかったらすぐに治療を受けようとか、破裂の確率が低ければ10年間は様子を見ようとか、おおよそのことを考えておくといいと思います。それでも様子を見ていて、だんだん不安になる人もいますから、なかなか難しい判断になります。


 近親者がくも膜下出血で亡くなったという理由で脳ドックを受けた方は、受ける前から「脳動脈瘤が見つかったら治療を受けよう」と決めていることが多いと思います。そのような決意を持って脳ドックを受けると、迷うことが少ないと思います。


 ただし、10mmより大きい脳動脈瘤はかなりの確率で破裂しますから(UCAS Japan NEJM 2012 366:2474-2482)、迷わず治療することをお勧めします。


「日本をリハビリテーションする」について

HEALTHPRESS 連載企画「日本をリハビリテーションする」では、脳卒中(脳梗塞、脳出血)、リハビリテーションについて知っておいていただきたいことを、分かりやすく説明しています。

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当院の鈴木龍太院長も執筆しています。

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