menu
鶴巻温泉病院 〒257-0001 神奈川県秦野市鶴巻北1-16-1 TEL 0463(78)1311

脳動静脈奇形(AVM)

脳神経外科専門医の病院長 鈴木 龍太 が「脳の病気」についてわかりやすく解説しました。

執筆 鶴巻温泉病院 病院長 鈴木 龍太

どんな病気

脳動静脈奇形(AVM)

 脳動静脈奇形(AVM)は一種の血管の奇形です。身体の血管は普通動脈から毛細血管となり、そこで酸素や栄養を組織に与え、変わりに不要な老廃物を血液に取り込んで静脈となり、心臓へ戻ります。AVMは動脈が異常な血管の塊を通って直接静脈と繋がっています。AVMは普通無症状ですが、けいれんを起こして始めて分かる例があります。またAVMは出血することがあり、脳内出血くも膜下出血の原因となります。AVMの出血は若い人に多く、20-40歳台で発症しますから、若い人の脳出血とくに脳葉出血、くも膜下出血はAVMを疑います。出血の頻度は年間2-3%程度と考えられていますが、一度出血したAVMは1年以内に再出血する率が6%と高くなります。


どんな症状

 AVMは存在だけでは殆ど無症状ですから、何かのきっかけがないと分かりません。AVMと診断された例のうち脳出血が最も多く50-60%、けいれん発作が30-40%です。出血すると重篤な症状となります。突然の頭痛、嘔吐があり、片麻痺などの局所脳症状が進んできます。出血した例の10%前後が死亡してしまいます。けいれんは手や足がピクピク震えるようになり、それが次第に広がって来るタイプが最も多いですが、突然倒れて身体が硬直したり、全身がガクガクする大発作の場合もあります。頻度は一定しません。年に2-3回の人が多いと思います。てんかん発作として治療されている人は必ず一度は脳の検査をする必要があります。他に頭部の雑音を訴える人がいます。比較的大きなAVMや硬膜AVMといい脳を覆っている膜にできたAVMで、心臓の拍動に一致したザッザッという音がします。


 特殊なAVMとしてガレン大静脈瘤があります。これは新生児や幼児に発症します。脳に大量の血流が必要なため心臓に負荷がかかり、心不全が起こります。頭部の雑音や水頭症による頭囲拡大で診断されます。治療は難しいですが可能です。治療されないと2ヶ月以上生存することは難しい病気です。

どんな診断・検査

 出血の場合はCTスキャンで分かりますが、AVM自体は造影剤を使ったCTをやらないと見えません。ですから出血の場合でもけんれんの場合でも必ず一度は造影CTを行います。脳神経外科医などの専門家が診察していない場合脳出血やてんかんと診断され、AVMとの診断がずっと遅れてしまうことがあります。MRIは造影剤を使わなくてもAVMを診断することができます。AVMの存在は造影CTやMRIで分かりますが、どの動脈から入って、どの静脈にでるのかが治療には重要で、これを知るために脳血管撮影を行います。

どんな治療法

 出血したAVMは再出血する可能性がありますので、完全にAVMを摘出することが理想的な治療となります。出血した時、出血が大きければ開頭して血腫を取り除きます。その際血管撮影でAVMがあることが分かっていれば、摘出しますが、大きな物や複雑なものは無理に取らずに落ち着いてから治療を行います。けいれんで発症したAVMも若い人では将来出血する確率が高いので、出血の予防の意味で開頭して全摘出することが一番です。しかしAVMのうち5cm以上の大きな物や、血管構築が複雑なもの、脳の中で重要な機能を持っている場所にあるAVMは直接手術ができません。


ガンマナイフ模式図

 そのような場合にはガンマナイフやリニアック放射線外科といって放射線のビームを当てる器械を使ってAVMを焼く放射線手術を行います。ガンマナイフは3cm以下(確実なものは2.5cm以下)の大きさのAVMにしか効果はありません。しかもAVMが閉塞するまでに1年から5年かかり、閉塞しないものも10-20%あります。完全に閉塞するまで出血する確率は減りません。大きなAVMに対しては血管内手術といって血管撮影と同じように股の動脈からカテーテルを入れ、これをAVMの流入動脈までプラチナでできた細いコイル(GDCコイル)や生体で使える瞬間接着剤などを使ってAVMを閉塞する塞栓術を行います。この方法は通常局所麻酔で行いますし、股の動脈に針を刺すだけですから、患者さんにとっては負担が少ない方法ですが、完全にAVMを閉塞することはできないため、2-3回行って、小さくしてから開頭手術やガンマナイフ治療に持って行く手段として行われています。
 AVMの手術や血管内手術は複雑で技術を要します。そのため治療による合併症も頻度が高く、十分検討した上で最良の治療方針を決定します。多くの場合、血管内手術のあと開頭手術やガンマナイフを行うというように段階的に治療します。年齢も考慮にいれ総合的に判断して最終的に治療しないという選択もありえます。

治療方法の選択肢 総合的に判断

 けいれんが症状であるAVMは治療をしてもけいれんが完全になくなることはありません。若い人や初発のけいれんからの期間が短いほど、手術でけいれんのコントロールができますが、抗けいれん剤は通常やめないで続けます。

当院のリハビリテーション|機能回復または日常生活復帰のために

 脳卒中などの脳血管疾患や、大腿骨などの骨折、外傷などによって脳や脊髄を損傷された患者様が、日常生活動作の向上や家庭・社会復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に行うための回復期リハビリテーションです。


 ご利用は、患者様が急性期病院で容態が安定してから当院に転院します。機能紹介、役割、特徴などは「回復期リハビリテーション」をご参照ください。

脳の病気

関連リンク

  • 院長ブログ
  • 私たちのサービス
  • 看護師採用情報
  • リハビリテーション部採用情報
  • わかりやすく解説 病気に話
  • 知って得する身体の話
  • メールマガジン
  • 在宅療養後方支援病院