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鶴巻温泉病院 〒257-0001 神奈川県秦野市鶴巻北1-16-1 TEL 0463(78)1311

頭痛

脳神経外科専門医の病院長 鈴木 龍太 が「脳の病気」についてわかりやすく解説しました。

執筆 鶴巻温泉病院 病院長 鈴木 龍太

どんな病気

頭痛の自覚がある人

 自分が頭痛もちだと思っている人は全国で3千万人もいるという統計があります。いつものことだからと我慢してしまうことが多いと思いますが、すぐに治療が必要な頭痛や、治療によって今迄の頭痛がうそのように治ってしまうものもありますから一度は病院に行って調べてもらうといいでしょう。頭痛は大きく分けて2種類あります。
 症候性頭痛と言って、脳に病気があって起こるものと、機能性頭痛と言って脳自体には病気がなく、脳周囲の筋肉や血管の異常で頭痛が起こるものがあります。症候性頭痛にはくも膜下出血脳腫瘍脳出血、髄膜炎などがあります。


 特にくも膜下出血はすぐに命に関わる病気ですからすぐに病院へ行かなければなりません。くも膜下出血の頭痛は突然に起こり、今まで経験した中で一番痛いものです。後頭部をハンマーで殴られたような痛みと表現する人もいます。しかし外来へ歩いてこられる患者さんのうちこのような症候性頭痛の患者さんは10人に1人もいません。


 普通の頭痛は殆どが機能性頭痛です。症候性頭痛はそれぞれの項目を見て頂き、この項では主に機能性頭痛についてお話します。機能性頭痛の中で最も多いものは緊張型頭痛というもので肉体的、精神的ストレスが原因でこめかみの所にある側頭筋や首の頸筋、肩の僧帽筋が緊張して起こるものです。もう一つの機能性頭痛は血管性頭痛で、片頭痛群発頭痛があります。
 片頭痛の原因はまだ全部分かっていませんが、現在有力な説はセロトニンという脳血管を収縮させる物質が何らかの原因で大量に出て脳の血管が一時的に収縮して頭痛が起こる前兆があり、その後反動で脳血管が拡張して頭痛を起こすと考えられています。
 片頭痛は20-40歳の女性に多く、遺伝的な要因がある場合があります。もう一つの群発頭痛は群発地震のように強い痛みが繰り返し起こるもので20-30代の男性に多いものです。

どんな症状

 緊張型頭痛の典型的な例では頭にはちまきを締め付けたような痛みが暫く続きます。夕方に起こることが多くそれほど強いものではなく、生活は続けられますが集中力がなくなります。気持ち悪くなる人は多くいますが、嘔吐する人は少ないです。最初はストレスが原因となりますがだんだん習慣性になってきます。精神的なものではその人の許容範囲を越えた人間関係の問題、経済的問題、家族の問題がストレスになります。うつ病の人にも良く見られる頭痛です。肉体的なストレスとしてコンピューターなどで同じ姿勢で仕事を続けることや、眼精疲労、かみ合わせなどの口と顎の問題、副鼻腔炎、首の骨の問題などがあります。枕が高すぎたり、姿勢が悪い場合もあります。日本人の目は瞼が下がっているのでそれを持ち上げるために額の筋肉がいつも緊張して起こると言う説もあります。


 片頭痛は血管性の頭痛ですから心臓の動悸に合った拍動性のズキンズキンとする頭痛です。片方だけのことが多いですが、必ずしもいつも決まった側ではありません。典型的な片頭痛では前兆と言って頭痛が起こる10-60分前に特有な症状が起こります。症状は殆どが目の症状で、一部分が見えなくなったり、閃輝暗点といいキラキラした光が走るものがあります。この症状のあと頭痛が起こり、嘔気や嘔吐を伴うことがあります。稀には一時的に言葉が出なかったり、片麻痺を起こしたりする例もあります。前兆を伴わない片頭痛もあり光や匂い、音に過敏になり、頭痛は片側に偏っています。生理痛もこれと関連していると考えられます。発作は月に1-2回起こる人が多く、数時間から3日間持続します。


緊張型頭痛 片頭痛

 群発頭痛は三叉神経痛(後でふれます)と並んで人類にとって最も激しい痛みと言われています。群発頭痛は1年に1-2回起こり、2-4週間続きます。この間一日に1-2回眼球をえぐられるような耐え難い痛みが1時間ほど続きます。必ず片側で、同じ側の目の充血、涙が出る、鼻汁が出るなどの自律神経症状がでます。飲酒やたばこを吸う若い男性に多く、緊張から開放された時や、睡眠後1時間半くらい経ってから起こることが多いものです。


 他の血管性要因を持つ頭痛として二日酔い、ホットドックやソーセージに入っている亜硝酸という薬品や中華料理に多く使用されているグルタミン酸ナトリウムによって頭痛が起こることがあります。性交中に頭痛が起こる人がいます。オーガスムの時に起こるものが多く血圧の上昇によるものと考えられています。血圧を下げるベータブロッカー(インデラル)が予防に有効と言われています。


 頭痛とはちょっと違いますが、三叉神経痛という病気があります。中年以上の女性に多くちょっとした刺激で顔や口の中に電撃痛が走ります。虫歯の痛みも三叉神経ですから虫歯の痛みが顔中に起こると考えて下さい。痛みは数秒で消えますが、この痛みのために、歯を磨いたり、髭を剃ったりできなくなります。冷たい風に当たっても痛く、食べる時やしゃべる時も痛いので患者さんは大変困ります。痛みはいつも同じ片側に起こります。

どんな診断・検査

 頭痛の診断は問診が大切です。いつどのように起こって、どのくらい続いたか、初めてか、よく起こるものか、他の症状はあるかなどを医師に伝える必要があります。特に「いつどのように」が大切で、頭痛が起こった瞬間がはっきり分かる場合は脳卒中を考える必要があります。


CT/MRIの検査

 症候性の頭痛の場合は症状が進行し、頭痛以外の症状も徐々に出てきます。機能性の頭痛は習慣性で頭痛がない時には全く症状がありません。しかし症候性か、機能性かは症状だけでは完全に区別できません。一度はCTかMRIを行って脳の検査をする必要があります。検査で病気がなければ機能性の頭痛ということになります。


 緊張型頭痛の人では検査で他の病気がないということが分かっただけで、不安が取れ症状が軽くなる人が沢山いますから、これも治療法の一つと言えます。


どんな治療法

 頭痛もちの人は市販の頭痛薬をいつも持っていて、しょっちゅう飲んでいます。頭痛薬は痛みを一時的に止めますから時々使用することは問題ありません。しかし毎日のように飲むようになると薬が効かなくなったり、逆に薬による頭痛が起こることがあります。ですから頭痛の原因を知り、頭痛が起こらなくするようにすることが治療の目標です。


 緊張型頭痛はストレスの原因が分かればそれを解決するようにすれば軽快します。心理的負担がありますから、まずCTやMRIの検査で他の病気がないことを確認します。それだけで治る人もいます。首や肩の運動、マッサージ(後ろの頭の付け根が有効です)、肩や首を温湿布や温熱療法で暖めるのも有効です。眼鏡を変えたり、枕を低くしたり、歯や顎の機能の治療で治ることもあります。このような姿勢や生活習慣の問題は解決することができますが、精神的ストレスは簡単に除去できるものではありません。仕事での肉体的ストレスも同様にすぐには解決できません。そのような場合は薬を使います。痛み止め、筋弛緩薬抗不安薬、抗うつ薬などを使いますが、痛み止めはできるだけ使わないようにしていきます。抗不安と筋弛緩作用がある薬 (デパス、セルシン、ソラナックス)を寝る前に飲むだけで治る場合もあります。慢性頭痛で悩まされている人は何をしてもだめだと思っている場合が多いのですが、薬を飲む時はこの薬が効くと思って飲んで下さい。頭痛は治せると信頼して治療を受ければ次第に薬も要らなくなります。


 片頭痛は以前は前兆が起こった時に酒石酸エルゴタミン(カフェルゴット、ヘクト)を飲んでその後に起こる頭痛を軽快させる方法が一般的でした。しかし、原因と考えられているセロトニンに関係した作用を持つ薬でトリプタン系(イミグラン・ゾーミック・レルパックス・マクサルトなど)の薬が開発され、2000年以降次々と発売されたました。現在では片頭痛発作にはまずトリプタン系の薬を使用します。皮下注射や鼻から吸入するタイプの製剤もあります。しかしトリプタン製剤は一錠1000円前後(3割で300円)と高価です。片頭痛はもともと月に1回程度の発作を前提としていますからこれでも成り立ちます。しかし片頭痛の発作が頻発する場合があります。これは本来もっている片頭痛がストレスや疲労で誘発されるものと考えられます。このような場合を混合型頭痛といい、緊張型頭痛に対する治療と片頭痛に対する治療を併用します。片頭痛の予防にはカルシウム拮抗薬やステロイド、抗うつ剤、抗てんかん薬などを使用する場合もあります。


 群発頭痛は起こると非常に辛く、鎮痛薬もあまり効きません。起こらないように予防することが大切です。飲酒で起こることが多いので、群発期間は禁酒します。起こった場合はスマトリプタン(イミグラン)の注射を受けると30分で75%程度の人に効果があります。大量の酸素吸入(7リットル、20分程度)も効果があります。しかしどちらも病院でしか治療できません。発作が起きる時間が決まっている人はその前に酒石酸エルゴタミン(カフェルゴット、ヘクト)を飲むと予防できる場合があります。群発頭痛を起こらないようにするには副腎皮質ホルモン(ステロイド)が80%に有効といわれていますが、副作用に要注意です。他に炭酸リチウムやインドメタシンという薬を使います。


 三叉神経痛に対しては通常の痛み止めではなくテグレトールという抗てんかん薬が非常に有効です。しかし段々効かなくなり、量が増えると眠気やふらつきが強くて生活に支障をきたします。ペインクリニックで神経ブロックを行う場合もありますが、必ず再発します。このような例では脳神経外科で手術を行います。全身麻酔で耳の後ろの部分を開けて三叉神経に絡み付く細い血管をはずす手術で痛みは数日で消失します。長期的に見ると70-80%の例でこの手術が有効です。最近は放射線のビームをあてるガンマナイフも三叉神経痛の治療に使われ始めています。この場合は痛みが取れるまでに数ヶ月かかります。

当院のリハビリテーション|機能回復または日常生活復帰のために

 脳卒中などの脳血管疾患や、大腿骨などの骨折、外傷などによって脳や脊髄を損傷された患者様が、日常生活動作の向上や家庭・社会復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に行うための回復期リハビリテーションです。


 ご利用は、患者様が急性期病院で容態が安定してから当院に転院します。機能紹介、役割、特徴などは「回復期リハビリテーション」をご参照ください。

脳の病気

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